お琴今昔物語

門下生の独り言

大人になってからの「お稽古事」

人様から何かを学ぶ事が好きな方々は、多数派だと感じる。

大人になってからのお稽古事は、とても楽しい。学び直しも楽しいが、全く違う分野に足を踏み入れるのはかなりの勇気を必要とするが、それだけの価値がある。

着付け教室の先生は、とても厳しい女性だった。当時70歳を超えていらしたが、 美しい先生(美人)だった。殆どの生徒さんが私よりもかなり年上だったが、先生に叱咤激励された後「こんなに叱られたのは、久しぶりだわ。今日も、気持ちがいいくらい叱られたわ。大人になると誰からも叱られなくなるからね」と笑いながら、帰り道で言ってらしたのを思い出す。

知識ゼロの状態からのスタートは特に面白い。人間としての姿形は立派な大人なのだが、中身はまるで小学一年生みたいになっている。普段はそこそこ責任のある立場に立たされているような人でさえ、お稽古場では違う人格を覗かせる。

童心に帰る、とは少し違う。自分の中の未熟な部分を、何のためらいも無くさらけ出せる場が、お稽古場やお教室なのだと思う。

上司、夫、妻、父、母、嫁など、沢山の肩書きに疲れてしまう時に、誰かに甘えたい…、と言うのも解らなく無いが、甘えるのではなく、素直に解放出来る場所。

色んな事が「出来て当たり前」に見られる大人が、唯一「出来なくて当たり前」で居られる場所。