世阿弥が遺した能の理論書「風姿花伝」に、世阿弥が説く人生の7段階を辿る。
老年期 ( 50歳以上 ) について
( 中略 )
観阿弥は、死の15日前に、駿河の浅間神社で、奉納の能を舞いました。
「その日の申楽、ことに花やかにて、見物の上下、一同に褒美せしなり」
「能は、枝葉も少なく、老木になるまで、花は散らで残りしなり」
観阿弥の舞は、あまり動かず、控えめな舞なのに、そこにこれまでの芸が残花となって表われたといいます。これこそが、世阿弥が考えた「芸術の完成」だったのです。老いても、その老木に花が咲く。それが世阿弥の理想の能だったのです。
尾形光琳のふたつの図に「時分の花」と「まことの花」を感じる…。