この空間で一体何が起きているのだろうか?
尺八と薩摩琵琶の奏者達からは、指揮者もオーケストラも見えない。
指揮者からは、尺八と薩摩琵琶の奏者達が見えない。
二極に異なるこの世界は、何処に焦点を合わせて演奏しているのだろう?
小澤征爾氏率いる新日本フィルハーモニーと、尺八奏者の横山勝也氏そして薩摩琵琶奏者の鶴田錦史氏による「ノヴェンバー・ステップス」。
背中で感じるのか、音の振動を感じるのか、あるいは全身で氣を感じるのか?
小澤征爾氏の身体が、指揮を執る腕が、音の流れとシンクロしている。言葉にすると陳腐になるからやめておこう。
真夜中の静寂を突き破る嵐の森を、裸足で駆け抜ける私は突如、冬の日本海の岩礁に突き落とされる。
飛沫を上げて岩を打ちつける荒波に、身体を刺すように凍てつく風が吹きすさぶ。
遠くに見知らぬ刺客の刃 (やいば) が鈍い光を帯びて鋭くこちらを睨んでいる。
決して、閉じた眼を開いてはいけない。眼を開ければそこには、いつもと代わり映えのしない日常しか、存在しないのだから…。
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